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photo:小林禎弘

片山亜紀展

2/7 Sat. 〜 3/1 Sun. 2009

 物作る人の幸せとはどのようなものをいうのだろう。もう二十年以上も前のことだが、北陸のある陶芸家を訪ねたことがある。彼は妻子と共に仕事場を兼ねた田舎家に住んでいた。別の場所に割竹式登窯を築いていた。通された居間で、まだ若かったその陶芸家は蒼ざめた面持ちで、矜持と殺気のようなものをうちに秘めて座してした。子供がほたえるのか畳目はほころびが目立ち、その畳からペンペン草のようなものが生えていた。しかし子供の目は澄み、頬は赤かったのを覚えている。貧しいのは貧しいのだろうが、しかし彼の生活のうちには大いなる救いがあるのではないかと思われた。彼は作陶といういわば数奇の世界に生きている風情があった。数奇とは名利とか富貴とは別ケンコンに存在する価値観とも言える。血肉を分けた無垢な生命と戯れて心洗われるときもあるのだろう。ああいう子供は都会では見られない。彼は不承しつつも、その状況というか、分際に応じた暮らしというものを、澄んだ心で受け入れ、満足しているのではないかと思った。なにより彼の作るものにそのことが現れていると思った。
 この世はままならぬものである。今も昔も人間万事金とはいえ、なおままならぬものはおのれの心である。物と利便にどれだけ恵まれようと、心の健康はいかにも保ち難いらしい。雨露がしのげ、今日食べるものがないというのでもなく、ひねれば出る水道、清潔なトイレ、安全で正確な交通機関、只で運んでくれる救急車、只で本が読める図書館、健康保険、困った時の生活保護、近頃は派遣村?なるものまであって、集まった人のほぼ全員に生活保護が認められたという。異例ではないのか。そしてなにより日常身辺に私たちは爆発音を聞くことはない。本当によくできたもので、このような社会を治まる御代というのではないか。ある国の人たちから見れば天国のようなところに映ることだろう。ところが私たちのなかには心に不安を持つ人がいかに多いことか。欠落と不遇に耐える心のなんとひ弱いことか。たとえば平等は願わしいが、現実として社会はまず平等であり得ない。この世は不本意と残念に満ちあふれたところである。それなのに完全な平等しか評価しないという。許せないのである。許せずそして耐えられないのである。そう思う心がおのれの心を蝕んでいるのである。わが生すでに蹉た(さた)たりとは、つとに兼好法師の言うところだがそうは思えないのである。
 人は永遠に自己中心でないと機嫌が悪いらしい。我ながらそう思う…。それならいっそ自我というものをもっと押し進めて、なにものにも犯されない自分だけの鉄壁の世界を求め、築くべきではないか。受けることだけを要求してルサンチマンに囚われているよりは、欠落と不遇をむしろ出発点として、エゴイスティックなまでにおのれ一人のための価値を追い求めるのである。そのためには精神の自由が要求されるのだろう。それの出来る人が真の意味で幸いと言えるような気がする。自分の心は自分で満たす他ないのである。
 くだんの陶芸家は作陶という没入の境地に自らを駆り立てることによって、欠落と不遇をより高次なものへと転化していた。今展の片山亜紀という一人の若い女性もそれのできている人である。別に彼女が不遇をかこっているわけではないだろうが、彼女はやるべきことを見つけ、選択し、一期の価値としての自分だけの世界を持している。それは誰であろうと侵犯できない世界である。そこは遮断された究極の自己中心の世界である。その中で自由なのである。筆者はこの類いの人たちを羨望しつつ思うのである。世の中にもっとこういう人たちが増えてくれたら、心の面でも治まる御代となるのではないかと。まこと心というものは、おのれのものでありながら最も御しがたい。
 彼女の作陶技法は、積層刳貫手(くりぬきで)といって、彼女オリジナルなものです。いわゆる練込手の一種ですが、練込でも象嵌でも出せない文様を実現しています。その線文様は、繊細かつくっきりと、線でありながら面をなし胎土の内部を横断しています。線が面をなし面が線をなしているのです。そして造化の妙を抽象し得て、未見の独自性を示していると思います。何卒ご清鑑賜りますようお願い申上げます。

葎

Aki Katayama
1979 広島に生れる
2002 京都市立芸術大学陶磁器専攻卒
2004 個展・京都高島屋美術工芸サロン(京都)
2006 個展・うつわショップBON.Ⅱ(京都)
2007 個展・サボア・ヴィーブル(東京)
2008 個展・サボア・ヴィーブル(東京)
2009 個展・ギャラリー器館(京都)

2008 第26回朝日現代クラフト展 審査員奨励賞

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本展の出品作品は、Shopページでご覧いただけます。
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