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photo:小林禎弘

村田森展

4/2 Sat. 〜 24 Sun. 2011

九月朔(ついたち)。
空折々掻曇りて細雨烟(けむり)の来るが如し。日まさに午ならむとする時、天地忽(たちまち)鳴動す。予書架の下に坐し『嚶鳴館遺草』を読みいたりしが架上の書帙(しょちつ)頭上に落来るに驚き、立って窗(まど)を開く。門外塵烟濛々殆(ほとんんど)咫尺(しせき)を弁ぜず。児女鶏犬の声頻(しきり)なり。塵烟は、門外人家の瓦の雨下したるがためなり。予もまた徐(おもむろ)に逃走の準備をなす。時に大地再び震動す…。
 今は読めなくなった漢字混じりではあるが、永井荷風の断腸亭日乗にある八十八年前のその時の描写である。文章力である。読めずともかえって目に浮かぶようである。帝都を襲った震災は、十万人余の人死を出したという。近くは阪神淡路大震災があった。
 地震雷火事親父というが、私たちが心の奥底で観念しながら最も恐れているものは地震である。規模と場所によっては、地震は私たちを絶体絶命のものの前に立たせる。たとえば「死」というようなものに直面する。そこで私たちはいかなるものとして、いかなるものの前に立たされているのだろうか。西洋の人なら神の前に立っているのだと言うかもしれない。しかしあの無情の場景は神も仏もないとしか言いようがないもののように思われる。
 今次の出来事は未曾有で、ダイモンのような波が、人を神隠しするようにさらっていった。あれでは死に場所もわからない。一切合財が烏有(うゆう)に帰した。さらに、機械あれば必ず機事ありという。人為を尽くした装置に閉じ込められていた小太陽が、地上に現前することになりはしないだろうか。しないまでも放射線は見えない刃物で人のDNAを切断する。今回は自然に加えて人為の災厄がさらに加わったということで、その有様を私たちは目の当たりにしているのである。
 私たちは今、どうにもならない問題に当面しているのかも知れない。いや、もともとどうにもならないたくさんの問題に取り囲まれているのが私たちなのかも知れない。この世界には私たちの力では解決を許さない問題が存在する。それらは平穏な時には顔を出さないだけである。眼前に現れていなくとも私たちはそうした絶体絶命の不断の脅かしに晒されているのである。今回の地震津波、原発の重大局面がまさにそうである。計算外のことが起こったということである。高をくくって自然を征服したつもり、手馴ずけたつもりでいても、自然はもともと全体としては、手馴ずけることのできるものではないのであるから、その大きな枠の中で考えれば、私たちのやっていることなど、目こぼし的に許された全くの特例にすぎないのである。だから東洋的に言えば人間の既存的なあり方は、根本的に弱く、無力で、はかないものだということである。
 筆舌に尽くし難い苦しみを甞めながら、すさまじい時間を経験している人たちがいる。しかしながら、どうにもならないもの、絶体絶命のものの前に立たされても、生きている者はなお生きていくしかない。生きていく努力がなされるはずである。人間など塵芥のごとくはかないものだとしても、人間を否定することはできない。生きていくための人間的努力が全くの無であるはずがない。私たちは、無の淵にかろうじて架けられた橋のうえにいるのだとしても、そこに厳然とあり、存在しているのである。虚無の誘惑に負けてはいけないと思う。彼の地の、多くの善良な人たちの努力を支持しなければならないと思う。-葎-

【今展では、多くのファンの方々を魅了して止まない村田森さんの染付ワールドを展観いたします。何卒ご清鑑賜りたくお願い申上げます】

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