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photo:Takeru KORODA

植葉香澄展Kasumi UEBA

エラン・ヴィタール(生命の躍動)

6/9 Sat. 〜 24 Sun. 2018

 筆者はテレビ人間で、あまりにくだらないものは避けて通るが、ドキュメントとか討論とか科学番組とか、そういったものはよく見る。たまさかだが、いい番組に出くわすこともある。民放と違ってふんだんに金を使えるせいか、おのずとNHKの番組が多くなってしまう。そのなかで宇宙をテーマにした科学番組があるのだが、外国の科学者などをあちこちから登場させて、ビッグバンとか素粒子とかブラックホールなどを題材に、宇宙の誕生や終焉の謎に迫ろうとしている。しかし結局は、人知には限界があり、あとは摩訶不思議、神のみぞ知る秘密といったような落ちで終わることが多い。まあそれは仕方がないとして、宇宙のこのような驚異の生成変化のうちに、進化した私たち人間がこの地球に存在しているのです、というふうな蛇尾がくっつく。その進化の頂点に、こんなに素晴らしい私たち人間が奇跡的に存在するのです、といったニュアンスである。そしてサイエンスの進歩は、こんなところにまで来ている、未来はワクワクものであるという。なんだか科学技術の礼賛過剰であり、ぬるいヒューマニズムみたいなものも透けて見えてしらけてしまうのである。
 たしかに生物は数十億年間の進化の歴史を辿ってきたのだろう。その頂点に私たちは立っているといわれる。進化の壮大なパノラマの頂点に達したのが人間であるらしい。しかしながら、ほとんど進化しないままに億万年前の姿のままでいる生物もいる。いわば多くの取り残された存在があるわけである。シーラカンスが思い浮かぶし、私たちによく似たサルといったものも、人間になりそこなって取り残された存在のように見える。私たち人間とはやはり違うわけである。
 しかし違うといってもいったいどこが違うのだろう。たとえば感覚し運動するという面では私たちはサルと全く共通である。この感覚から、記憶というものが考えられるが、サルだって記憶はするだろう。そして何度も同じことがあったという記憶が、経験というものの母体になるのだと思うが、サルだって経験を積むのだろう。経験を積んで人間より深刻な反省をしているのかもしれない。筆者には、ここまでの進化が大変だったのだと思われる。ここまでが気の遠くなるほどの長い道のりだったのではないか。そこまでは、近縁の類人猿とは横一線のひと並びだったのだろう。その一線から、ある類人猿の一種が飛び出すのである。ホモサピエンスへの途を疾走し出したのである。ほかのサルたちは取り残されたのである。これは何による配剤であろうか。進化の謎ということが言われるが、それはダーウィンの進化論だけでは説明のつかないところが残るからだろう。適者生存とか段階論だけでは、止むことのない進化の勢いというか、横一線からの飛び出しといったものは説明ができないように思う。解剖学的にあるいは生物学的に見ればごくわずかな、脳のどこかにあるとしか考えられない、一つの小さな差を生ぜしめたものを説明できるだろうか。だれも知らないだろう。やはり謎である。私たちはかろうじて人間であるような気がしてくるのである。
 写真の作は植葉香澄のものである。台座からぐいぐいと螺旋状にひねり上げている。遺伝子のそれのように見えてくる。てっぺんでキメラが今にも姿を現さんとしている。なにかタイトルはあるかと問えば、彼女はこれをChimera Evolutionとしたいと言う。エボリューションには生物の進化という意味が含まれる。なんだか言い得て妙である。花を透かした台座は、仏像の框(かまち)座のような印象である。そこから手びねりで50cmほど引き上げている。天晴な造形だと思う。台座の底は残念ながら窯キズが入ってしまったが、現在漆の本職に金繕いをしてもらっている。思い切ったこれだけの造形にありがちな向うキズのようなものだと思っている。筆者は、これにエラン・ヴィタール、生命の躍動といったものを見る思いがする。生命の沸騰というか躍動といったものが、創造的進化をもたらすのではなかろうか…。この作は、はからずも進化の様相の秘密のようなものを垣間見せて成功しているし、まこと彼女の真骨頂が如実なのである。-葎-

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