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photo:Takeru KORODA

豊増一雄展Kazuo TOYOMASU

Spiraling up to The Point

6/29 Sat. 〜 7/14 Sun. 2019

【螺旋を描く -豊増一雄の新作に寄せて-】
 伝統陶芸でも現代陶芸でもクラフトでもない、二十一世紀の新しい陶芸の潮流を私は陶芸の原理主義と呼んでいる。原理主義という言葉は評判が悪いが、ここでは原理原則にしがみつくという意味ではなく、陶芸界では馴染みの「写し」という方法論に対抗して、外見は二の次だという意味である。伝統陶芸の作家が古陶磁(数百年経った伝世品)の見かけを写そうとするのに対して、原理主義者は古陶磁の原理を見極め、それに沿って一から新しく(未知なる数百年前の新品として)作る。それは、伝世品を鑑賞するだけの温故知新ではなく、近年発展著しい文献学的、地質学的、化学的、考古学的な研究成果を参照しながら「故きを温ね」「新しきを知る」こと、すなわち古陶磁の新鮮な解釈である。
 そんな原理主義者の一人である豊増一雄は、もっぱら日本磁器の生成期を「温ねる」。唐津から初期伊万里、初期伊万里から古九谷、鍋島へ、ただし濁手以前の時期、言い換えれば、石の陶器としての唐津から朝鮮式の磁器へ、朝鮮式から景徳鎮式への移行期であり、年代にすれば、おおよそ1610年から40年代で、これは明末に相当する。初々しい発生期の日本磁器の現場に、爛熟した明末の磁器が流れ込んできて急に混じり合った。この乱流に流れ込んだ日中韓の様々な支流を辿り、新たな美を発見することから豊増作品は生まれてくる。
 ところで、薪窯というものは楽器のようなものではないか。新品の楽器が、徐々に演奏家の体に馴染み、硬かった音色がほぐれ、弱音も強音も良く伸びて美しく鳴るようになる、そのように、窯もまた、窯焚きを繰り返すにしたがって成長し、強い火も弱い火もよく行き渡って、美しく焼けるようになる、と。
 豊増一雄が薪窯(単室登窯)へ移行したのは2010年のことであった。当時、初期伊万里のとろりとした肌合いを目指したという白瓷と染付の器は、新窯を反映してか、文字通り「初期」の清新さと生硬さが入り交じったものであった。繊細な型押しの染付芙蓉皿を購入して使っていたが、うっかり割ってしまい、金継ぎしたらまるで本物の古陶磁のような品格が現れて驚いたことがあった。
 その後、年を追うごとに、陶房708(708とは彼の住まいする有田の番地に由来するらしい)の窯は豊かな音色を増し、ここ数年、その「演奏」は自在境に達したかと思われるほどに、釉薬が艶やかに溶けた清潔な白瓷や、美しく発色した祥瑞が次々と私たちの目を楽しませている。展覧会数が右肩上がりに増加しているのも当然であろう。今年の10月には野村美術館で個展を控えていると聞く。
 さて、そんな作家の新作は、再び初期伊万里(?)の肌合いの染付と、刻花や鎬で装飾した白瓷である。造形自体に大きな変化はないのだが、まるで螺旋を一回りしたかのように、全体的にあの「艶」や「発色」が、巧拙のレベルを脱して深みを増している。決めるところだけをビシッと決めたら、あとは力を抜いて窯の火に委ねたという感じだろうか。DM用に送られてきた作品は、和風の「あそび」を引き締めるとともに中国風の完璧さを外して、何とも格調高い。豊増作品に親しんだ者なら見慣れている蓮弁の刻花や鎬も、微妙な違いではあるが、新たな鋭さと勢いを帯びている。
 染付や白瓷と平行して、二年ほど前から、中国宜興窯(ぎこうよう)の紫砂の茶注を参照した、唐津頁岩(けつがん)による一連の作品が作られているが、今展の出色は、オリジナルの頁岩青瓷である。これまでも作家は青瓷を制作してきたが、ここにきてそれが、紫砂(宜興窯)、紫定(定窯)、青白瓷、白瓷、染付…という歴史的関係において、再考されている。かてて加えて、いつもながらの精緻な印花や刻花が、焼き上がりの発色に不思議なグラデーションを作り出す。青瓷の「青」とは何であったのか。なぜ白瓷や青瓷に刻花印花(定窯、越窯、耀州窯)が加えられたのか。装飾は豊増青瓷とどのような関係にあるのか。すでに豊増作品を知っているつもりの者も、瞠目するだろう。豊増一雄はこれからが旬である。- 清水穣(同志社大学教授)-

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本展の出品作品は、Shopページでご覧いただけます。
Pieces shown in this exhibit can be viewed, and, if available, purchased, on the Shop webpage. Please follow this link to the Shop and search using the artist's name, or navigate using the alphabetical list of artist names.

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