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photo:Takeru KORODA

梶原靖元展Yasumoto KAJIHARA

Trace of the Beauty and its Genealogy

8/10 Sat. 〜 9/1 Sun. 2019

〝金剛山図〟 
 梶原靖元さん六回目の展となります。二〇一三年が初回でした。ですから毎年といっていいほど回を重ねて今に至るわけであります。懲りずによくやってくださったと、有難く、これは僥倖なことであったと思っております。その間、梶原さんの人とナリ、考え方とか制作姿勢、そして作品についてその都度、評文のようなものを案内状に添えてまいりました。彼へのオマージュのようなものともいえます。二度ほど美術評論家の清水穣氏にもお願いし、すぐれた評文をいただきました。ということで、これまでの文章によって、彼の人と作品についてはすでに言いたいこと言うべきことは、筆者の逃げ口上でもありますが、ほぼ尽きているのではないかと思いたくもあり…、
といったところなのです。
 しかしながら、再び新たな個展を目前に控えるということには、やはり当方にとっても格別な思いがあり、それを鶴首する気持ちがこれまた新鮮なのです。彼の作るものには〝美〟と〝清〟と〝勁(つよさ)〟といったものが窺われます。これらの価値を併せ持ったものが、ヴァリエーション豊かに提示されます。梶原さんはマンネリズムに陥らぬよう、展ごとに趣向を変え、遊び心をもって、少しく冒険的なことも試行して、場所が弊館だからというわけでもないでしょうが、そのような心がけで過去五回の展をやってきてくださったような気がします。これは抽斗(ひきだし)の奥が深くない人にはむつかしいことのように思われます。
 しかし今展の案内状用に送られてきたものを見て、筆者は面食らいました。なにやら熱にさらされ、熔けかかり結晶化しつつあるような岩石が、一個ゴロリと出てきたからです。なんじゃこれは、盆石か?と思い、添えてあったメモを見ると、「器館様 八月の個展DM用作品です。 〝金剛山図〟。 宜しくお願いいたします。梶原」とだけ書いてありました。筆者は、金剛山とあったので、南北朝鮮の国境近くのあの山のことかと疑いました。ということは、梶原さんは陶片や石の採集のためあちこち渉猟する人ですので、行ってきたのか!と、驚きの目をもって数日それを眺めていたのでした。
 梶原さんは、高句麗とか百済の時代から、新羅、高麗、李朝へと流れる半島の歴史空間のなかで、彼(か)の民族が生(な)したものに深甚なるシンパシーを抱く人です。これほどまでにと思うほどに深いものがあります。そして広範です。その所以(ゆえん)をあれこれおもんみるに、半島との地政学的、歴史的な側面もありますが、それよりむしろ彼自身に由縁する、自(おの)ずからのことであるように思われるのです。
 九州(唐津)とあの半島が、地政学的に切っても切れないどうしようもない関係にあったこと、また陶磁史的に見て、これもどうしようもなく、いわば血の混じり合うような濃密な関係性が生起したということ、そのような個を超えた、抜き差しならぬ因縁のようなものがバックグラウンドにあります。しかしこういった背景は、偶然と必然が織りなす歴史的なものであり、いわば外部的なものです。それよりも大前提として、あるいは始点として、彼の内奥に眠っていたパトスを揺り動かしたものがあります。それは発生期の唐津にみられるエセンシャルな美であったと思います。彼はあるときそれをあらためて発見したのだと思います。そして驚きをもってそれを凝視したのだと思います。まずもって唐津の美に対し目が見開いたのです、覚醒したのです。ここに彼のもの作る人としての真の始まりがあったのだと思います。
 結局〝金剛山図〟は、有田近郊の龍門というところで採取した流紋岩とのことでした。別名石英粗面岩ともいい、天草陶石としても有名です。陶磁器の素地や釉薬に重要な成分が入り混じっている石です。分解して青磁釉にも用いられるとの由。それを窯の中に放り入れたらしいです。釉の成分がうまく熔融したのでしょう。それを割り欠いて〝金剛山図〟としたのでした。
 「梶原さん、古窯跡の位置図などを見ると北はほとんど白紙やね。戦前はフィールドワークや発掘調査がある程度までされたらしいけど、戦後は途切れたということですか。まとまった学術調査として完結してないわけやね。」「金剛山もそうだけど国交が開かれたら行ってみたい。」「さもありなん。未知なる領域やからね。」「行けたら行ってみたい。」「しかしあの畸形な独裁制は後戻りがきかんから、行くとこまでいくよ。いつになることやら。最後は自国の人民に殺られると思うけど。しかし彼の国の人民はじれったいね。」「…」 彼がおのれの目と心魂で知った美。その美は何処から来たのか。その美の脈絡と系譜を知りたいという欲求。彼は彼の国ではなく、彼の地へ行ってみたいのであろう。未知なる美への憧憬と探求。そのピュアなモメンタムを彼は失わずにいる。〝金剛山図〟を見ていて、唐津にいる梶原靖元のもとへ思いが馳せた。-葎-

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