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photo:Takeru KORODA

〝青の領域〟展

Ceramic Range of Various Blues

10/5 Sat. 〜 20 Sun. 2019

 人には美への憧れがある。それを見たい、それに触れたい、あるいはわがものにしたいと思う。おのれ自身の心身にも美を具えたいと思う心がある。それは人間性のうちに第一に認めらるべき一大事であって、もし美に憧れる心を欠くならば、ほとんどの価値の立脚の裏付けを失うことになるのだろう。現代の私たちはすでに日常的な宗教心というものを喪失してしまっているようだが、それならせめて美という価値への信仰心のようなものは、いや信仰といっていい過ぎなら、一個の道徳律として復活できないものだろうかと思う。
 般若心経に、不生不滅、不増不減という言葉がある。心経は空空空とか、無無無とか、しつこいくらいこの世に実体はないという。この世のものは、すべて因と縁とのからまり合いによって、仮象として存在するに過ぎないのだと説く。万象が空であり無であることの、その空相というか実態は、生ずることもなく、滅することもなく、増すこともなく、減ずることもないという。色即是空、空即是色ともいう。畢竟(ひっきょう)一切は空であり無であると。心経を読むとあまりに空と無に過ぎる。抽象が効きすぎて、我も含め衆生には難解である。今に伝わる仏教経典が、もしわずか二百字余の般若心経だけだったら、その後の仏教は、宗教として広く衆生のなかへ浸透していくことはなかったのではないか。
 しかしながら、じっと般若心経を眺めていると、いわく言い難いが、抽象の抽象というか、直接に説かれてはいないものが抽象されているような気分になってくるのである。心経は、例によって件(くだん)のごとく説いているのだが、そうはいいつつ言外に、なにか〝常在〟なるものがあるといっているように筆者には思われるのである。抽象の極みのなかで黙示しているように感じられる。常在なるもの、それはこの世に見られるものではない。しかしそこへ思い至れといっているように思われるのである。それは筆者なりに考えるに、純粋にそれ自体だけで存在するものとして、離在して常在し、唯一の形相を保ち、永遠に存在するものとしてあるようなものと思われる。しかしそれは釈尊であっても、それが何であるかはいっていないし、いえるものでもなかったろうと思われる。ただ釈尊の智慧が、認識を深めていくなかで、いわば言語道断の飛躍によってそれ(それはもちろんユダヤ的な造物主のようなものではない)を感得し得ていたのかもしれない。心経を見ていると、それが不立文字となって立ち昇ってくるような心持ちがする。釈尊はその永遠なるものに参与せよとも説いておられるのではないかと思われるのである。
 この世の美一切は多としてあちこちに偏在している。その美は生じたり滅したりする美である。はかなくて、あっけなく、むなしいものである。しかしそれらは現に美しいものとして私たちの目に心に映ずるのである。それに驚き、感動し、私たちは勇気づけられる。他方で、私たちは、寸毫(すんごう)も増減することなく、また何の影響も受けることのない常在の美への憧れを失ってはいけないだろう。それは美そのものというか、超越する美、一(い)つなる美ともいうべきものである。それに憧れ、渇仰(かつごう)する。あるいはそれを想起しようとする。それはなんだか誰にもわからないし、見えもしない。しかしそれに憧れ、それに参与したいと思う気持ちがなければ、私たちは今生の美さえ見落とすことになり、新たな美を生み出す力も湧いてこないのだと思われる。永遠なる一つなる美。その他のものは、すべてこれに参与することによってこの世の美となるのではないか。
 今回は〝青の領域〟というお題で作家各位にお願いしております。やきものの青といえば青磁に思いが行きます。青磁は、千年単位の記憶や経験の、集積と超克によって達成されてきたものだと思います。初めは灰釉とか自然釉のものにとどまっていました。それから鈍い緑というか草色に、それが淡い緑色系のものに、そして秘色といわれる緑の青磁に昇華されます。唐代のことで、早くもわが国に渡ってきています。そしてついに宋代にいたって青の青磁が現れます。それは光を受けて深青色、雨過天晴といわれる天青色に照り映えるものでした。このような美の達成は個々の努力とか経験を超越するものがありますが、しかしやはり個々の美への認識の深まりと、その深まりのなかで、突然に与えられる飛躍の総和によってなされたものだと思うのです。その飛躍を啓示といってもいいでしょう。人に〝より美しいもの〟を渇仰させるのは一体なんでしょうか。常在の美への祈りにも似た純粋な宗教心でしょうか。筆者にはこのことが最重要事に思われてならないのです。
 今展では青の領域ということで、十名の方々がそれぞれの青を発揮してくださることだろうと期待しております。皆様におかれましても何卒のご清賞を賜りますよう伏してお願い申上げます。-葎-

出展作家名 
 今泉毅(青瓷、天目)IMAIZUMI Takeshi
 種田真紀(染付、ルリ、九谷青)OIDA Maki
 酒井智也(ピグメントブルー)SAKAI Tomoya
 澤谷由子(呉須イッチン)SAWATANI Yuko
 高柳むつみ(染付、ルリ、九谷青)TAKAYANAGI Mutsumi
 堤展子(ツツミブルー)TSUTSUMI Nobuko
 鍾雯婷(積層青地削出し)CHUNG Wen-Ting
 楢木野淑子(イッチン、トルコブルー)NARAGINO Yoshiko
 馬場隆志(備前窯変)BABA Takashi
 福本双紅(釉彩)FUKUMOTO Fuku

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本展の出品作品は、Shopページでご覧いただけます。
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