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photo:Takeru KORODA

鯉江明展Akira KOIE

Pieces from the Place Far Away

7/11 Sat. 〜 26 Sun. 2020

 〝陶芸とは何か〟という問いを現在問い直してみても、今さらながらと思われるところがないでもない。すでにいろいろと言われてきたからである。近代以降の知性ある陶芸家や評論家の考えの赴くところ、それは陶芸というものをアウフヘーベン、すなわち止揚(しよう)せんとするものだったように思われる。止揚などと見ただけではよくわからない漢字を出して恐縮だが、すなわち万年にわたるやきものの来し方すべてを包含しつつ、一旦それを否定し、そこから一歩進めて、価値の顛倒(てんとう)あるいは新たな展開をもくろむというふうなものだったように思う。ざっくり大仰に恰好をつけた言い方でいってしまえばそういうことだろう。しかしながら陶芸とは何かという問いを問わさしめたのには、一方で少し情けない事情も働いていたように思う。明治を境にやきものは、芸術美術のなかで一段低く見られるようになったということがある。純粋美術などという言葉は明治以前にはなかった。芸術もそうである。まあ出来星の言葉である。工芸も苦し紛れの翻訳語である。みな西洋美術の用語や概念の、にわか翻訳語である。しかしそれを有り難がったから、陶芸は彫刻でもなしということで、いわゆるファインアートの垣根の外へカテゴライズされたのである。しかしながら、そんなことは今となってはどうでもいいことのように思われる。いや、もともとどうでもいいことだったようにも思われるのである。
 やきものというものには、ある宿命的なことがつきまとう。火によって焼かれるということがある。なにをといえば土を焼くのである。可塑の土をこねたり、遠心力を加えたり、型を用いたりしてかたちを与え、それを焼く。焼けて出てきたものがやきものである。洒落てやけものと言った人がいた。ところで古人は、この世界は木火土金水、あるいは火風水土からなると考えた。それらの相克とか入れ替わりによって、この世の生成変化が現れるのだと見た。そのように世界を把握しようとしたのである。これは東洋でも西洋でも同じように、相前後して紀元前の古代に考えられた哲理のようなものだが、科学的に今でも真をついているところがあるのではないか。木火土金水というのは東洋の五行説だが、木から火へ、火から土、土から金、金から水、そしてまた水から木というような循環のなかで、それぞれがその死を生きたり、その生を死んだりして回って行くということなのだろう。ちなみに茶道では、茶室のなかの道具の組み合わせ、配置の仕方は、陰陽五行の思想に沿ってなされる。
 そして、木・火・土・金・水といえば、やきもののプロセスのなかで、すべて連続されていることに気付かされる。やきものにはこれら五元のすべてが不可欠であり、かつすべてを兼ね具えてやきものとなるのである。最終過程の焼成では、やきものはいわば、火の死を生き、同時にみずから(土)の生を死んで、窯から生み出されるのである。大げさにいえば、やきものは、自然のコスモスが人為によって一点に凝縮されたようなものともいえる。そんなふうに思い至れば、近代以来の〝陶芸とは何ぞや〟といった、外部からの影響を背景とする定義づけとか、理論づけとか、自己同一性の回復努力などは、健気ながらもばかばかしいことのように思われてくるのである。ごくろうさんといったところである。そして言論といったものの虚しさを覚えるのである…。陶芸は、やきものは、作る人に由って芸術ともなれば、こりゃダメだということにもなるし、いとおしいものにもなれば、どうでもいいものにもなるということでいいのである。ただしダメものも、イカものも、どうでもいいものも、あっていいのである。これでいいのだ。
 今展は、カナダと国境を接するミネソタ州のセントジョンズという大学の構内にある窯で焼かれたもの。鯉江明、2018年の作品である。彼はたくさん作った。それらが2019年の窯焚きを終えてようやく今年になって送られて来た。三つの窯構造をあわせ持つ、総延長40mの巨大な子宮である。父鯉江良二もこの窯に魅せられて何度も行き来している。今回は火色美しく、窯変めくるめく、それが衒(てら)いのない彼の素直で気持ちのよい造形とあいまって、一段と次元が上がって見える。
 彼の消息に曰く…「工房の名前はセント・ジョンズ・ポタリ―です。窯を主宰するリチャード・ブレスナハン先生は、数十年前に、小山冨士雄さんのアシストと通訳を務めたシスター・ジョアンナさん(修道尼であろう。たしか小山もクウェーカー教徒だった)の紹介を得て、中里太郎右衛門さんのところに入門するため来日されました。唐津での修行のあいだに、鈴木五郎さんとか金子潤さんと知り合い、その流れで父との交流が始まったそうです。窯の名はシスターに因んで、ジョアンナキルンです。内部は、高さ2.5m、幅約3.5m、長さ約40m(煙突含む)です。傾斜のあるトンネル状の窯ですが、手前から倒炎式穴窯、続いて登り窯、後ろの半分ほどが種子島焼をモチーフにした蛇窯で、左右に薪をくべる窓が9カ所ずつあります。そして煙道、煙突と続きます。窯詰めは膨大な点数になるので、主にリチャードさんとお弟子さんたち数名で1~2か月ほどかかります。焼成は4交代のシフトを組んで十日余り焼きます」。遠来の作、つくづく縁は異なもの味なものと思う。何卒のご清賞をよろしくお願い申上げます。-葎-

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本展の出品作品は、Shopページでご覧いただけます。
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