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photo:Takeru KORODA

岸田匡啓展Masahiro KISHIDA

Pure and Clean Breeze from KARATSU

5/28 Sat. 〜 6/12 Sun. 2022

 最近は映画館へ足を運ぶことをしなくなった。しかし本当に映画を楽しもうと思うなら、大スクリーンを前に、皆といっしょに時間と空間を共有して見るべきなのだろう。映画は総合芸術といわれる。動く写真による文芸作品ともいえる。そしてもしもどこかで、奇跡的な出来映えの映画に出会えたとして、それが満座の観客の心を衝き動かすようなものであったなら、エンドロールとともに喝采が自然と湧き起こるのかもしれない。そのとき喝采によってまず観客の好悪が表明されたのである。またその場で公然たる批評がなされているのを見ることになる。つまりその場で、観客の好悪がはっきり示され、批評がなされ、審判が下されるのである。そして納得というか一体感の共有が成立するのだろう。このような状況における審判が、すなわち作品の批評なのである。劇場という閉鎖空間であることと、直接性と即時性において一つの理想形かもしれない。
 映画はさておき、芸術の作品の批評ということになると、たとえばある作品を、一般の見物が面白いとか美しいとか素晴らしいと感じるとすれば、それはそれで一つの審判が出たということになる。しかしそのように審判された作品が本当にすぐれた作品なのかどうか。現代では広告代理店的手法で仕掛けられるアートなるものが一世を風靡したりする。概してそれらは流行もの廃り(すた)もののようである。謀(はかりごと)によってプロモートされるアートとはいかなるものなのか。大多数の個々が審判したり、あるいは審判させられているものが、いきおい幅を利かせるようではダメだと思う。芸術と享受側双方の果てしない堕落につながるのではないか。私たちの文化芸術一般というものを考えるとき、それは恐るべきことのように思われるのである。
 ここに私たちは大衆から独立した、少数の真の批評者の存在を認めなければならないのではないか。そして真の批評とは以下のようなものであらねばならないのではないか。具象であれ抽象であれ、作品がどこまで真に迫っているのかを知っているのかどうか。すなわち真実性を指摘できるかどうか。美術史はじめ歴史を俯瞰視する眼力があるか。技術技法についてまがりなりにも玄人的知識を有しているかどうか。そしてその芸術が私たちにとってどのようなためになるのか、裨益するところがあるのかどうか。どのような善美なるもの、気付きをもたらすものなのか…。こういった事々を、レトリック豊かにロゴスに変換しうるような人が真の批評者のように思われるのでる。もっともそのためには、批評者自身が生き生きとした感性や、作者の真実性追求の姿勢とか作者の人となりとかを理解する知性、さらにいえば人間としての徳性をも具えていなければならないのだろう。大げさにいえば批評者は哲学者でもあるべきなのである。まあ見渡せばそんな人はめったにいなさそうで、また理想像をいっているが、しかしそういった高みからいかにほど遠いかを知らねば、私たちの不足も認識できないではないか。真の批評無きところに、花実は咲かず作品の向上もないのである。
 お話変わって知る人ぞ知るであろうが、陶芸界に日本陶磁協会賞という賞がある。筆者はその推薦人の末席を汚している。この賞は、日展や工芸会といった組織の内輪的ベクトルが働くような賞とは趣きを異にし、どこか芥川や直木賞といった文学賞にも似た、高踏的な立ち位置を保ち続けてきた歴史をもつ。これの推薦人が、以前は何人だったか忘れたが、今回はかなり増えて百数十人かになったようである。裾野を広げるのはいい。しかしながら授賞の話となると、推薦者は作品と作者に対して、批評と審判を試みるという任を負わねばならない。それに耐える人がどれほどいたのか。案の定、広げたことで票がてんでばらばらに散ってしまった。結果、一票獲得の人が大部分を占めることとなった。もちろん一票でも作家として認むべき人も多くいたが、冗談のような人も混じっていた。玉石混交の極みといった図であった。カオスである。またこの賞には、別に金賞という特別賞が設けられていてこの賞は、長年に渡りキャリアを刻んできた著名作家に与うべき賞で、過去に協会賞を取った人にほとんど授与されてきた。それがまだ協会賞を取ってもいない、駆け出しの新進に金賞票を入れている推薦人がいるのである。金賞の由縁と重みを了解していないのである。うかつに推薦人を増やした弊が出たのではないか。
 推薦での結果は、トップが十三票、二位が十票だった。以下六名を加え、候補者八名で理事による最終審判がなされた。各理事の持ち点は一位が三点、二位が二点、三位が一点との由。結果は、推薦トップの作家が、そのまま十四点獲得で一位、協会賞となった。めでたいが怪訝に思ったのは、推薦二位の作家の点数だった。トップと十二点差の二点で、最下位近くにいるではないか。このギャップはいかなるものなのか。理事の方々は、この次点作家の作品を真剣に見たことがあるのだろうか。筆者はこの作家を二十年来見てきた。他の店での評判は知らないが、少なくも筆者のところでは声を聞く。一位の作家とはそのオリジナリテにおいて格がちがうぞという声を。もうスペースがないのでやめるが、今回これではなんだかなあと失望を禁じ得なかったのである。依って件(くだん)の如しにて…。
 今展の岸田匡啓のことはそっちのけになったしまった。推薦に彼の名はなかったが、もし彼に一票であっても入っていたら、その一票はかくかく然(しか)るべきものとして、共に同慶の至りとしたことだろう。岸田さんご寛恕のほどを。-葎-

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