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photo:Takeru KORODA

富田啓之展Hiroyuki TOMITA

A Dilemma of Artificiality in Art

7/23 Sat. 〜 8/7 Sun. 2022

 写真の作は富田啓之の茶碗である。半筒と碗ナリの茶碗を呼び継ぎで合体させたようなフォルムになっているが、実際は呼び継ぎではなく一体の造形である。金銀彩、銀彩のところはプラチナだと思うが、その他にもラスター彩やカイラギ状、スリップウェア文と、このメタリックな小品にさまざまな呈色と文様とテクスチュアをてんこ盛りに盛っている。これを得るに焼成は五度に及ぶらしい。過剰の嫌いなきにしもあらずだが、フォルムとデザインがものをいって、散漫を抑え破綻を免れている。辛うじてというべきか、際々のところを渡り切ったような風情である。見事というべきだろう。しかしそれにしてもこの作、作為のかたまりのような茶碗といった印象である。
 思うにやきものに限らず人間諸事万般、作為と無作為ということがある。周到にめぐらされた作為、全き無垢な無作為。無作為をねらった作為。無作為へ行こうとしてずっこける作為。作為、無作為双方につきまとう成功と不成功。そして結局、作為は無作為に敵するのか、敵しないのか。
 やきものの無作為の出来映えに、特異な反応を示すのが私たちの美意識でもある。たとえば、その昔に見立てられた伝世の高麗茶碗。あれらは私たち特有の審美眼によって無数の中から掬(すく)いとられてきたものである。そして時代を超えて伝世されてきた。そのなかに、天の出来事のようにしてそこにあるといった風情で私たちに迫ってくるものがある。私たちはそこに蒸留されたような無作為というものを見るのではないか。あれらは個我を超えた、李朝時代の民族的エートスのなかから生まれてきたものなのである。
 そしてそれを、近代に入って民藝という造語によって再評価したのが柳宗悦という宗教学者だった。ここで柳の思想に立ち入ることはしないが、彼は併合の憂き目にあった朝鮮民族への同情一入深く、たとえば井戸と楽を引き合いにしてこんなことをいっている。
『高台の削りは井戸においてとくに美しい。だが美しいからといって、無理にその真似をする。もとの自然さが残ろうはずがない。あの強いて加えたいびつや、でこぼこや、かかる畸形は日本独特の醜悪な形であって、世界にも類例がない。そうして美を最も深く味わっている茶人たちがこの弊をかつて醸し、今も醸しつつあるのである。〝楽〟と銘ある茶碗の如き、ほとんど醜くなかった場合はない。井戸と楽とは、出発において、過程において、結果において、性質が違うのである。同じ茶碗とはいうが全然類型を異にする。喜左衛門井戸はまさに楽への反律である。挑戦である云々…』
 楽は醜いらしい。筆者はこの文章の底意になんというか、柳の他力思想と当時のイデオロギー状況の変な混じり合いみたいなものを見る思いがして、がっかりした覚えがある。無作為礼賛の極論的文章ともいえるのではないか。
 利休居士と長次郎の合作ともいえる一連の黒楽は、いかにして達成されたのか。利休は、柳のいう民藝運動なるものの祖形のような人で、すでに柳より三百年前に実践している。見立てという行為によってである。自身の描く侘び茶の理想郷に到達せんと真剣場裡に身命を賭していた。そしてついに見立てを超えて〝創作〟をなさんと欲したのだろう。ちょうどそのとき長次郎との邂逅があったのである。そして老荘から禅に連なる思想が結晶したような黒楽茶碗をものにしたのである。あれはミニマリズムの極致である。壮大な抽象である。そういう意味では作為の凝り固まったものなのである。しかしまた深遠な無作為の作為といったものの発露であったとも思われるのである。
 人は神ならぬ身である、もともと作為を凝らさずしてものを生すことなどできないのである。民藝と芸術のあいだには、創作という一点において、決定的な隔絶があるのである。柳先生もそんなことはおわかりだったと思うのだが…。
 今回初個展の富田啓之展であります。今展では、下絵上絵を幾重にも施した色絵ものが出展されます。彼曰く、花火のようなにぎやかな展観にしてみたいとの由、彼の花火(作為)の派手な打ち上げを期待しつつ作品の到来を待ちたいと思います。何卒のご清鑑を伏してお願い申上げます。-葎-

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