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photo:永田陽

福本双紅展Fuku FUKUMOTO

12/5 Sat. 〜 27 Sun. 2009

芸人という言葉には、どこか哀切な響きがある。芸をよすがとし、芸を売って、彼らは世間では一段低いところにいる人間だと見られていた。彼らも自分たちの分際といったものを知って、カタギの衆とはちがう世界に住む自分たちだと割り切っていた。だから芸人がどれだけ不品行であろうと、どれだけスキャンダルや金をまき散らかそうと、所詮芸人のことだからと許されていた。かえって芸人の鏡だと言われたりして、カタギの側もねたんだりすることがなかったのである。芸人にモラルを求めるようなヤボはしなかったのである。すなわち芸しか求めなかったのである。芸人とはそのような外道的な存在と見られていたのだが、今はちがう。芸人たちはいまや名士である。何億もかせぐ者がいる。カタギの立つ瀬がないほどである。権威をほしがり、通俗モラルを装うようになった。だからちょっとした不品行でも引きずりおろされる憂き目をみるのである。もう立小便する自由もなくなったのではないか。何かを売れば何かを失うとはこのことだろう。芸人はいつからか芸を売るべきところを間違って意地を売ってしまったようである。

     
 話しがあらぬ方へ行かないうちに… 今展の福本双紅は、すでに若手というには憚るほどの赫々たる受賞歴を持つ。京都に生まれ、京都芸大を出ている。両親は福本繁樹、潮子夫妻で染色の著名作家である。お二人ともこれまた京都芸大出である。生まれも育ちも、だから彼女にとっては色濃いものがあったのではないか。しかし教育よろしくを得たか、彼女には芸術一家臭さとか、家とか親に囚われた風は感じられない。専攻も親とは違うものを選択したのは彼女の手柄である。しかし、大きなところでの宿命的なものは免れないのであって、彼女もそれを背負わねばならなかったのではないか。おのれの出自にきおい立つこともあったのではないか。

 大学へ進んで彼女は大いに悩んだという。意志と選択のいまだ一致を見ない何年間かを過ごさねばならなかったのである。芸大はこういう深い悩みを前にして不親切である。先生だってどう教えていいか本当はわからないのである。近頃の大学は学生をお客様あつかいする。先生自ら友のごときものに成り下がる。学生はいよいよ惑うのである(このこと特定の大学のことを言っているのではありません)。先生も気の毒ではある。あまりに学校行政的なことを押し付けられて心身ともに消耗し、だんだん依って立つ自分の本来の仕事に対しても自信を喪失していくのである。芸大は専門学校ではない。禅宗の不立文字のように、先生は自己の精神のスタイルと実作とを、学生に日常的に呈示し続けてはじめて何かを与えることができるのではないか。先生も作家として現在進行形で立っていなければならないのである。そのような師弟関係あれかしと思うのである。

 幸運にも、福本は在学中に一期一会を得ている。特別授業でやって来た深見陶治との出会いである。徒手空拳のまま芸術を実践しなければと、あせりもがいていた彼女に、深見は自分の技術すべてを惜しげもなくさらけ出して見せる授業をしたという。彼女はその時、深見のいわば芸術家などというものではない、凄い芸人の部分を見せつけられたのだと思う。芸というのは、見知らぬ人間の心の中へスルリと入っていく技術と言えるのではないか。深見は、芸人が生きて行くためには是が非でも芸を磨かねばならないように、そのような絶対的な必要と切実さでもって、おのれの芸を磨いてきた人だったのである。お定まりの芸術家気分におぼれかけていた彼女には、なんというか一つのショック療法のようなものだったのではないか。世の中を見たというか、目が開くような経験だったのではないか。深見の深切な意図は不立文字のように伝わったのである。福本にもそれだけの機縁と器量がもともと備わっていたからこそだろう。すばらしい教育の一場面となったのである。

 芸術とは人が認めるのである。ひとりよがりの観念的遊戯ではない。筆者は芸術家とかアーティストという言葉にはどうも抵抗をおぼえる。どこが?という人が多すぎる。芸人らしい芸人はすでに少なくなったが、芸術の人たらんとする諸君には、芸人の真似はしても芸術家の真似はするなかれと言いたく思い云爾(しかいう)。

葎

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本展の出品作品は、Shopページでご覧いただけます。
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