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  • 鈴木卓 -黒錆彩三方花生- H.34.6cm
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photo:小林禎弘

鈴木卓 展Taku SUZUKI

SHRINKING FREEDOM

1/9 Sat. 〜 31 Sun. 2010

 私たちの暮らしはとても豊かでカラフルである。格差がひどいなどと言われているが、本当の貧乏、格差はこんなものではないだろう。私たちは虚ろな目をして飢餓の子を抱く母親を目にすることはない。爆裂音を間近に聞くこともない。政治経済といろいろさわがしいことがあるが、それらは今のところ所詮さわがしいというほどのことで、なにか恐ろしいものが地ひびきを立てて襲って来るといった状況でも時代でもない。なんだかんだと文句をたれながら、私たちはなんでも言いたいことを言い、なんでも好きなことができる日常にいるのである。私たちは公私ともに空前絶後の自由を謳歌しているのかもしれない。

 しかし満つれば欠くるという。今が自由の極みならそろそろ終わりへと向いつつあるようにも思われるのである。知らないうちにさまざまな方面で自由が縮小されているように感じるし、何処か息苦しい狭苦しいところへ向っているような気もする。古人も考えたように、自由というものの理解は、だいたい次のようなものになるのではないか。まず国全体が他の国に支配されていないこと。そして国内が一党一派の独裁制でないこと。政治に多数決が用いられていること。何人も法の前で平等であること。しかしその能力や徳によって区別され評価されていること。貧乏とか身分によって志しが妨げられていないこと。だれでも公職に就けること。よって治者と被治者の入れ替わりがあること等々である。そこではだれもが自由に生き、カラフルで賑やかな、あらゆる生活が見事に共存している…。そう考えると、私たちはそれなりに近いところにいるように思われる。しかしながら、そのような自由の国の成員たる資格を備えているのかどうか。怪しいのではないかとも思われるのである。

 そしてなにかの前触れか、符丁を合わせるように、近頃は法律の作られ方がどんどん加速しているように思われる。どこまで増えて行くのか。鬱陶しい。バカげた法律でもいったん出来てしまったら昔に返らない。法はそもそも自由を担保し守るためにあるはずだが、すきあらば自由に牙をむくという恐ろしい一面がある。くだらない法律がどんどん作られているということは、自由を享受する資格を私たちの社会が失いつつあることを示している。いつか通った道であろうか。節制なき自由と暴慢な欲望が、笑うべき、恥ずべき、恐るべき人間とそれにまつわる事象を生んでいる。極悪人ともいえる人間もたくさん出てきている。法のベクトルはそこへ向い、道徳や習慣の代わりに法でタガを嵌めようとする。法の下での平等という原理に従えば、それは笑うべき恥ずべき人間と一緒くたにされ、彼らをなんとかしようとするような法の下に同等に置かれるということでもある。これはたまらないことである。代償を払いながらも今の自由を支えている世の中堅の多くの人たちの自由が、一部の人間にむさぼり食われていくわけである。

 現代のように欲望が無限に開放された社会には最低な人間が出てくる。自由とか民主主義が生み出す必然的な所産かもしれない。しかし同時に偽善的でない真の意味での善き人たちも、このような自由な社会でこそ生まれるのではないか。自由のなかにいながら節制とか克己心あるいは正気を失わない人たちである。これらの人たちは自由のためにと承知の上で、自分の自由の一部を差し出している人たちである。もし法律だらけの、人間の内心に善を全く期待しないような、甲斐ない世の中が完成したりすれば、まずこの〝善き人〟たちがその精神を維持することを諦めるのではないか。自由の防人としての立場を放棄するのではないか。そして無関心とニヒリズムを呼ぶだろう。そのとき何か恐ろしいものが襲ってきて、私たちのこの自由は夢か仮象であったと思い知らされるのである。新春早々憚り乍ら各位におかれましてもご用心召しませと思い云爾(しかいう)。

 鈴木卓プロフィール。早稲田の建築を経て多治見市陶磁器意匠研究所を修了。受賞歴、第一回菊池ビエンナーレ展優秀賞、第三回現代茶陶展大賞、朝日現代クラフト展優秀賞、第七回益子陶芸展加守田章二賞、第四回パラミタ陶芸大賞展大賞。所蔵先、イナックスライブミュージアム、菊池寛美記念美術館、益子陶芸美術館、パラミタミュージアム。一九七七年生まれ。すずきたく。

葎

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