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photo:小林禎弘

原菜央展Nao HARA

9/4 Sat. 〜 29 Wed. 2010

永井荷風の断腸亭日乗には、日記ということもあってけっこう赤裸(正直)なことが書いてある。みっともない人というか…。金にこまかいことがわかるし、きれいな口をきくわりに助平で、本が売れて実入りのよいときなどは玉の井あたりで連日女あさりをしている。自分のことは棚に上げ、信じてもいない儒教を借りて他を難じる。そのときは舌鋒するどく容赦がない。社会主義などバカにしているくせに、むかし手を切った女がゆすりに来たら(不徳のいたすところ)、資本主義の権化などと罵倒している。荷風は金利生活者だった。ケチでウソつきで助平でつめたいではないか。荷風のこのあたりは自身が好んで援用する儒教的モラルからすれば人品低劣と言うよりほかなくなる。それなのに荷風が今もこれからも日本語のある限り読まれるのはなぜかと言えば、ひとえにその文章(作品)のせいである。それは千年の日本語の殿(しんがり)をつとめてあくまで美しい。だから些々たるケチのごときウソのごときはその「美」の前にすべて許されてしまうのである。

 作品は人なりという。確かにそうである。作品にはその人の人品骨柄、了見といったものが出る。作品と言える作品は人間の精神の内実を煮詰めて抽象したものだからだ。それを見るのは見物である。そして、荷風は既に死んだ人だが、私たち生きている者同士、どうしても作品よりその人に目が行きがちである。もちろん作品も見るが、そして先(ま)ずは作品がものを言っていなければ作者への好奇心も評価も起こりようがないが、やっぱり見物は人を見てしまうのである。何を見るのか。何が見たいのか。知りたいのか。容姿か、人相か、その人の言動か思想か。モラルか。スキャンダラスな部分か。成功か失敗か。全てだろう。要するにその人の生き方とかスタイルを見物は見て、作品とその人を結びつけ、贔屓(ひいき)になったり見放したりするのである。これは芸人にも言えることである。勝手なものである。残酷なものである。けれどもこの世は生きている人の世の中なのだから仕方がない。他者との通路をシャットアウトしては、作品とこの世との関わりも生じようがないのである。しかし作者にしてみれば、作ったものがすべてである、それで判断してくれ、そうでなければ芸術などというものに従事できるか、自分のことはカスだと思ってくれと言いたくなることもあるのではないか。

 作品は人なりというのは一面で真実だが、そう単純に割り切れるものではない。私たちは作者その人の一面だけをことさらに見て、作品に幻滅したり排除したりすべきではないと思う。たとえその人が殺人者であっても、私たちにその資格があるのかという問題が残るのではないか。その人は私たちの奥底に潜むどうしようもないものに目を見開かせ、自覚させ、自知へと導く痛烈な批判者かも知れないのである。例によって話の風呂敷をまた広げてしまったが、こんなことを思ったのは、今展の原菜央という作者、ちょっと変わっていて(本人はちっとも思ってないだろうが)、たまに何を言っているのかわからないところがある人で、そしてその作品は、使ってはいけない単語になったらしいが一種分裂症気味で、しかし分裂症的に拡散しようとする意識とイメージを一点にかき集め、凝り固めたような作品をものする人で、筆者は彼女の作品と人を見て好感と同情を禁じ得なかったのである。その作品はまことに質量密にして大なるものがある。

 刮目に価する新進、初めての個展です。作品とその人との、こんなことを言っては彼女に悪いですが、ふたたびこの世は生きている人の世の中です、興味深い重なり合いを機会あれば見ていただきたく思いご案内申上げます。

葎

HARA,NAO
2007 京都精華大学卒業
2008 京都市産業技術研修所本科(旧京都市工業試験場)修了
2009 同専修科修了
2009 京都府立陶工高等技術専門校中退

2009 遊碗展(京都・ギャラリー器館)
     剽藝祭(へうげさい)’09 feat. へうげもの(松坂屋名古屋)
     第29回長三賞展 入選
2010 遊腕展(京都・ギャラリー器館)
     試みの茶事EZO茶会(札幌)

●勝手ながら、九月九日(木)~十二日(日)まで臨時
 休業させていただきます。
 木曜定休日ですが、二十三日(木)秋分の日は営業い
 たします。

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