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photo:小林禎弘

梶原靖元展Yasumoto KAJIHARA

唐津安堵

6/1 Sat. 〜 23 Sun. 2013

 政治にしろ文化にしろ、歴史上ひときわ光彩を放つものは、たいてい花火のように短命ではかない。例えば自由とか民主主義といっても、真の意味で実現されたのは古代ギリシャと近代ヨーロッパの一部だけではなかったか。今となっては失楽園物語である。わが国でも大正デモクラシーというのがあった。あれは東洋においては一つの奇跡だったのかもしれない。しかしこれもほとんど一瞬のエピソードで終わりである。いまの私たちの自由はどうか。どうも胡散くさい。私たちの自由あるいは民主主義は、そもそも私たちプロパーのものではない。血を流して得たものでもなし、大切にしようという心構えもない。壊れやすいものとして畏れる気持ちもない。ある種の人たちは、人の自由はそっちのけで、おのれの自由は神聖不可侵だと思っている。そしてほんのちょっとでも傷つけられようものなら、ヒステリックにさわぎ出す。そんなとき、たとえば人権という言葉が千万の味方となるのである。おのれの夜郎自大な自由のために都合よく人権を押し出してくる。こういった自由の価値に等価しない人たちが、デマゴーグたちの格好の餌食となるのである。現在の私たちの社会も、おそかれはやかれ一つのエピソードとして語られるようなことになるのかもしれません。ご用心。
 しかし考えてみたら、人間の歴史は無数のエピソードの連続のようにも思える。それらは善悪、美醜、正邪によって彩られている。人間とその精神の、昂揚と絶頂を示すものもあれば、極悪の、悪魔的な様相を見せるものもある。そのなかで、芸術もつかの間の光芒を放っては消えてゆく。しかしながらその達成は、現物のモニュマンとして残る。この点が思想や哲学と違って芸術のありがたいところで、昔の聖賢の思想とか哲学はさっぱり伝わってはいないが、芸術は残ってさえいれば、そのまま享受することができるし、物として伝えることもできるのである。芸術には救済や覚醒の力が宿っている。芸術などあろうがなかろうがと思うなかれ。
 お話ぐっと狭まりまして、唐津も一閃の光芒のごとしで、せいぜい二十年である。その間に頂点と真骨頂を示している。あれは一言でいえば桃山という時代のダイナミズムが生さしめたものである。内乱、群雄割拠、朝鮮遠征といったゲバルトの時代。無常の風が唐津にもうず巻いていた。攪拌されるスープのような混沌たる世界である。そこへ触媒が作用して、一種の科学反応を誘引する。波多氏、倭寇、朝鮮民族、秀吉、それに利休、禅思想、侘数寄。これらの触媒の作用によって、あたかも生命誕生のように、スープのなかで結晶したのが唐津である。偶然のかたまりのようにして、しかし必然として出来(しゅったい)したようにも思われ、神秘性さえ感じさせる。
 梶原は、この地に生まれ、この地に安堵する作家である。彼は唐津という歴史に、するどく深く感応する人のように思われる。そして、最も必要なものだけのやきものを作ろうとしているように見える。余計な付着物がまといつく前のものという謂いである。それには、古人の心を心とし、当時の出来事や、当時の人たちの日常に思いを馳せ、真正面から正対せねばなるまい。それを歴史という鏡に映し込むのである。そして凝視すれば、その鏡のなかにおのれ自身も発見するのではないか。歴史を鏡とし自知にいたるのである。そのような域から発信されるものは、その人オリジナルのものとなろう。彼の作には寂びの美がある。はっとさせられることがある。彼は、心中に一枚、唐津オリジンと同時代の鏡を持っているのではないかと思われ云爾(しかいう)。-葎-

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