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photo:来田猛

高柳むつみ展Mutsumi TAKAYANAGI

One and Only Cosmos of Her Own

12/3 Sat. 〜 25 Sun. 2016

古人は汝自らを知れという。自知というか自己認識というか、自己の内奥とともに、この世界のなかの自己を知るということは、昔から宗教とか哲学の根本問題でもあったと思われる。生ぬるい自分探しというものではない。

 日常のなかで私たちは、この世の景色を眺めるともなしに眺めながら、仕事をしたり、たとえば二人だけの楽しい時間を過ごしたり、本を読んだりテレビを見たり、ものを食べたり睡眠をとったりしているわけである。そんなときの自己の意識は、べつに大きな波瀾もなく流れているといえる。そういった日常茶飯の自己というものがあるわけである。しかし他を忘れテレビに熱中しているときのような、波瀾のない自己が自己のすべてではないだろう。私たちの自己というものは、この世界の自然とか社会とか歴史といったものと、分かちがたい関係を持つものであって、その関係によって一定の状況の下に置かれる自己でもあるのである。そんななかで、この世界を自己でもって認識しようとするとき、その認識は、全く意外なことや、ショッキングなことにぶち当たったりすることがある。このとき自己認識は世界認識を求めているのだが、それは常に人知を超える未知なるものの連続のようなもので、この他知によって自己認識しようとする努力は、収拾不能のカオスに陥ったりする。なぜならこの世界は、変転きわまりないものであり、いままで見ていた世界は一体なんだったのかと、一変したりするからである。だからその自己認識の探求は、まじめにやればやるほど際限のないものとなるのだろう。正気を保つのも大変なのである。

 そろそろ風呂敷の大きさを小さくしていきたいと思うのですが…、私たちは浮世に生きているかぎり、なにやかやと他事に多忙なはずである。電話は鳴るし、郵便はやって来るし、問い合わせや訪問の知らせがあるし、人と会わねばならないし、仕事や納期や支払いの〆切はあるし、新聞とかテレビとかネットから流される情報は洪水のごとしで応接にいとまがないし、そしてこの季節、秋の日の光に照り映えるいつか見た木々の美しさをふと思い出したりする。これらすべてが、次から次へと心理学の視野闘争のように押し寄せてくるのである。そして過ぎて行く。

 このことは、私たちの意識も、私たちが日常見るものも、この世界と同じく、変転きわまりないものであるということなのである。過ぎ去りながら、複雑、多様なのである。このような複雑と多様の重みに耐え切れない人もいる。この時代、そのような人はこれからどんどん増えて行くような気がする。しかしながら私たちは正気と狂気のはざまで、自己の一点で全世界を受け止めているともいえるだろう。ラショナルな知の一点においてである。唯一一個の自己の見る世界が、だれも覗き見ることのできない全世界なのである。そしてその重みになんとか耐えようとするとき、善悪いずこへ向かうのかは別として、この全世界とこの自己が、運命共同体であることを知るのではないか。そうと知れば、私たちは人間を否定するようなニヒリズムから免れるのではないか。人間は、ずっと救いのないカオスのなかにいるのかもしれないが、しかしカオスのなかにもコスモスへと移行するための善なるエレメンツが溶け込んでいるようにも思われるのである。

 高柳むつみ展も本展で四回目となる。以前にも述べたようなことだが、彼女の作品は、ディテールと全体が、強烈な連鎖反応を起こしているような格別なもので、そのような作をものする彼女の才には稀なるものがある、いわば微塵世界と三千大世界が混淆し、混淆しながら秩序立ったコスモスの様相を呈しているといったことを述べた。ディテールに尋常ならざる神経が払われており、要するにディテールの奥にまたディテールがひそませてあるといった有り様で、そのような微塵的世界がほぼ完璧に完成度高く成立しているので、その対極であるコスモス的な、大なる世界へと見る者を引っ張っていくのだと思われる。ミクロとマクロが美のなかで化学反応を起こしているような印象を受ける。また彼女の作は一篇の詩のようでもある。それもスケールの大きな、抒情でもあり叙事詩でもあるといえるような詩的世界を感じさせる。とくに大作は、コスモスのあるべき姿の片鱗を示して雄弁である。そのような作を、美を伴って作品化させる技術は、これは生得なのか、すでに彼女は手にしているように思われる。このことも筆者はつとに驚きをもって見てきた。少しほめ過ぎかもしれないが、とにかくワンダーな女性(ひと)なのである。

 本年掉尾の展であります。何卒のご清賞をお願い申上げます。

葎

Mutsumi TAKAYANAGI
2008 京都市立芸術大学卒業
     フィンランド、ヘルシンキ美術大学
     (現:アアルト大学)へ派遣留学
2010 京都市立芸術大学大学院修了
     富山県、八尾町にて制作 ~2016
     現在京都府、京北にて制作

●個展
2011 くうきをうつす/磁器 やまびこのアロー:INAXギャラリー
     くうきをうつす/磁器 古城のプロペラ:galleryはねうさぎ
2013 くうきをうつす/磁器 マルトリケトラ: 田口美術/宝鑑美術
     くうきをうつす/磁器 シロノブレ:ギャラリー器館
2014 高柳むつみ展/Macroscopic and Microscopic:ギャラリー器館
2015 高柳むつみ展/-くうきをうつす磁器-:髙島屋京都店
     高柳むつみ展 / Like a Cosmic Wind :ギャラリー器館
2016 高柳むつみ展/ One and Only Cosmos of Her Own:ギャラリー器館

●グループ展
2009 Led by Form – Production in Series:
     フィスカルス,フィンランド
2010 もうそうのふきだし展:ギャラリーマロニエ
     アジア現代陶芸展:弘益大学,韓国
2011 奇想の女子陶芸:阪急百貨店うめだ本店
2012 わんの形:gallery VOICE
     陶世女八人展:ギャラリー器館
2013 酒器展:ギャラリー数寄
2014 叶道夫/松谷展 併催企画展:@KCUA
     POINT展:田島美術店/伊藤美術店
     15周年企画展 茶碗展:ギャラリー数寄
     ぐいのみ展:ギャラリー数寄
2015 POINT展:田島美術店/伊藤美術店
     ぐいのみ展:ギャラリー数寄
2016 美の予感 2016-啓蟄-:髙島屋

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