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  •  今回で杉本太郎の個展は二度目となる。先日彼の仕事場を京都の西北、高尾の向うへ訪ねた。建物は以前はどこかの右翼の合宿所か武道場だったらしく、がらん堂としていて、バスケットボールでもやれそうな広さであった。こんな広い工房は見たことがない。仕事場の環境が作品にどうこう影響するとは思わないが、めぐまれているなあと思った。
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杉本太郎展Taro SUGIMOTO

9/9 Sat. 〜 10/1 Sun. 2006

彼はここで呻吟し酩酊し(酒がスキである)、悩みよろこび思いあざなえるようにやきものに取り組んでいるようだ。まづデリケットな心の持主である。悩み多き男のようである。そして志は高い。土でもってなにか自分の内なるものを抽象できるはずだと虎視眈々としているような男である。当方も何者かであると踏んでの再びの依頼である…

 本当にたまにだが、やきものを見て、それはよく撮れた写真でもよい、ギョッという感じで自分の眼ン玉が吸いつくというか、持って行かれるような思いをすることがある。おのれの審美眼を信用するわけではない。好き嫌いがあるだけであるが、だからこむずかしいことは抜きにしてのことであるが、年に一度か二度経験することである。そんなとき眼ン玉は触覚器官となって、そのものの上へころころと転がるように出て行きたがるので思わず眼窩に手をやる。眼窩におさまっている眼ン玉を確認して安心するのであるが、こんな思いをするのは、脳ミソでものを見ていないからであろうか。

特異な、幽(カス)かな価値観、父祖の眼が乗り移ったかのような感じがある。

 やきものに限らず人間諸事万般、作為と無作為ということがある。めぐらされた作為と百パーセントまるごとの無作為。無作為を狙ったあるいは装った作為。ずっこける作為と無作為。そして結局作為は無作為に敵するのか。

 やきものの無作為のものに、尋常ならざるところで感応するのはこの国の眼ン玉だけである。そして千万に一つのものが時代をこえて伝世してくる。現代の作家はめったなことではそれにかなわない。しかたがない。作るものに能書きが付くことになる。作品が解釈を求め脳ミソで見ろと迫ってくる。待ってましたと芸術という概念が援用される。健康不健康でいえばこっちの方が不健康に決まっている。

 八木一夫の作品世界も決して健康とは言えない。そもそも時代と見物が不健康なのだから、自分も近代人なのだから、いたしかたないのである。そのしかたなくのところで八木は、反近代のユーモアまじりの毒をひそませながら、見物をして思わず脚下照顧せしめるような作品を呈示したのである。レトリックでひしひしと作品を包囲し、そのレトリックがまたカッコいいのであるが、核心はこれ一流独自の毒に貫かれていた。一方でそれに倦(ウ)むようにそこらの詩人では及びもつかぬ詞藻でもって泣けるような叙情詩の一群もなしている。

 謀りごとを帷幄(イアク)にめぐらすと云うが、八木一夫とてウケをねらったであろう。今度はこっち方面から意表をついてやろうと思ったことであろう。そしてまんまとそれをやってのける。作為の勝利である。あの勝利の数は八木だからこその境地であり、やはり天才のすなるところかもしれない。その作為は見物を翻弄する作為である。深く刻みつけられる作為である。悪意を秘め同時にウケをねらって確実に奏功する作為であり、芸人の出来そこない芸術家になりといった狂歌があったかどうか、下司なウケねらいといった類のものではなく、その作為には要するにおもねり媚び追従(ツイショウ)が微塵も含まれないのである。

 今展の杉本にも、八木一夫の顰(ヒソ)みに倣(ナラ)って、作為に邁進してもらいたい。彼はどうも狙いが大きいようだから。へたの無作為休むに似たりである。ただしおもねりや媚びの誘惑には一顧だにしないでもらいたい。どうせ人の言うことなど聞かない性分だろう。作為をこらし、めぐらせていただきたい。ずっこけることのほうが多かろうが(本人はずっこけていることは見えない)…。本物なら遠くへ届くこともあろう。ダメなら討ち死にするのみである。理解者を得ることができなかったということである。

 顰みに倣ってと云ったのは彼に期待するからである。彼にスケールを感じるからである。アンテナをよく張り生活のなかで詞藻を養うことを忘れないでいてほしく思う。

葎

スギモトタロウ
1970 京都生まれ
1992 京都精華大学美術学部卒
1995、1997 世界工芸大賞金沢入選
1999 中日新聞弟6回陶芸ビエンナーレ特別賞
2003 スイスカルージュ市賞入選
2005 京都府美術工芸新鋭選抜展 

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