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photo:小林禎弘

内田鋼一展Koichi UCHIDA

7/11 Sat. 〜 8/2 Sun. 2009

 たとえば小説家が政治というものに興味が昂じて、それがなんらかの行動にまでエスカレートし、そして失望と幻滅の果てに自身の根本が毀損せられ、精神のバランスに異常をきたすといったことがある。政治にたいする理想か幻想がそのような不似合いな行動へと駆り立てるのかもしれない。文学という領域で味わう一種の全能感のようなものが後押しをするのかもしれない。しかし脳ミソと現実とは常に齟齬するものである。机の上で文章をねったり、絵空事を頭の中でふくらませたりする人が政治などというものに手を出せば、なにもかも無にしてしまうというようなことになるのである。自分の王国に建設されていた善美なるものまでが音を立てて崩れ去るのである。よせばいいのにといった図である。私たちの政治は、たとえばギリシャで行われていた形而上のものを尊ぶような哲人政治とはまるで違うように思われる。理想は裏切られるわけである。そのような不幸な小説家を私たちは知っている。三島由紀夫とか川端康成とかがそうであろう。彼らは政治行動と自身の文学との矛盾というか、アンバランスの収拾がつかなくなり、バランスを取りもどす錘のようなものとして死を必要としたのだと思う。フィクションの世界の住人である小説家が柄にもない役を演じようとした悲喜劇の一つの極みを見る思いがする。しかし私たちはこれを突拍子もない異様なこととして笑うべきであろうか…。
 三島や川端が自らの芸術のために冒した行動には狂気のようなものも感じられる。しかしながら矛盾やアンバランスを恐れない彼らの生き方にたいし、とんでもないとか、突拍子もない異様なことであるとか、そういう感じだけで一笑に付してしまってはあまりに単純、鈍感というものではないかと思うのである。人は生きていれば突然鳴り響く不協和音のようなものを聞くことがある。そしてそれの鳴り響くほうへ思わず引き入れられてしまうといったことがあるのではないか。死が待っているとしてもである。そこに一つの逸脱があるわけである。それはなにか新しい自分、さらなる自由への渇望のようなものとも言えるのではないか。
 八木一夫はこういうことを言っている。「新たな自分を蝕知することなしに、創造はあり得ない。あらゆる分野においても、創造者を見ていると、まるで狩人のような気配が感じられる。彼らは常に何らかとの出くわしを積極的に待ちうけているのだ。その出くわした事物との摩擦によって屈折した、新しい彼を、絶えず彼自身の内部に発見しようとしているのである。彼らの生態は、いってみれば、周囲のことごとくが秘境といえるのではあるまいか。出くわし、発見し、そして創造と、精力的な自らの屈折のさせかたは、決して並の日常性から生じるというものではない」。(懐中の風景 講談社刊)
 ひと処に安住していられないのが芸術の人の性(さが)ということであろう。自分の立ち位置というか現在地点に居心地の悪さ、違和感のようなものを感じてしまうのである。芸術の人はその違和なるものを表現しようとすることがあるわけである。三島川端八木と来て落語の三題噺のようだが、内田鋼一は、八木一夫の言う「狩人のような気配」を放つ人である。彼はやきもののあらゆるカテゴリーを渉猟する。その呈示の仕方にはめくるめくものがある。小器用にこなすという意味ではない。彼の所産は、おのれの立ち位置をずらし続けているからこそ捻出できるところのものである。彼も一所に長くはいられない人なのである。その日常はタフなものであろう。しかし彼ほどの者が担うべき価値ある日常ではないか。そして「新たな自分を触知する」というような刹那に、彼の耳朶(じだ)を打つであろう不協和音とはどのような響きを持つものなのか。彼の秘密の理解の一助にと、できることなら盗み聞いてみたいと思わせるのである。-葎-

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