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photo:永田陽

森野彰人展

8/8 Sat. 〜 30 Sun. 2009

仏陀の教えの根本的なものに自他一如がある。自他不二ともいう。自と他の二元に囚われてはならないのである。自己の全き無化、空化まで行けという。そうしてすべてを受け入れるのである。それができれば生き死にを離れて宇宙の真実に目覚めるという。生老病死の四苦の超克、欲望や怒りや愚痴からの開放。無とか空、不生不滅といった境地への悟入。生身の人間には死なない限りできそうにない。仏陀は生きながらにして無の人に成りおおせたのだろうが、これまで一体どれだけの人が仏陀の涅槃の境地にまで達しえたか。一過的にイリュージョンのようにして悟道することはあるのだろう。けれどもやっぱり元の木阿弥にかえってしまうのが人間なのではないか。それでいいのである…。仏陀の一元論は、仰ぐべき尊い教えである。それに近づこうとする心が貴いのである。

 娑婆の凡夫凡婦としては、一つの知恵として人を二つに分けてみるということがある。人間二元論である。老若男女は人を老若、また男女に分けたのである。それに美醜賢愚とか善悪正邪を加えれば何通りの組合せができるだろう。老いて愚かで醜い男、若く美しい賢い女といった具合に、たいていの人はどれかに属しそうである。これだけでは退屈だから他にも考えてみると「当人と他人」がある。さすればこの国は他人というものに満ち満ちている国だということがわかる。他人とは我が事を我が事とは思わない人の謂いである。この類の人たちは自分で自分の国の悪口を言いたがる。迎合と媚びとを良心的な仕草に溶かし込みながら。頑是ない子供にまで吹き込もうとする。どこの国に自分の国の悪口を教科書に書きこむ国があろう。教育の恐ろしさを知るべきである。一方、自分の利益とみれば、白を黒だと言いはるのが当人たちである。そして近隣にはこの当人丸出しの国々が控えている。彼らに比して私たちの当人ぶりには著しく遜色がある。彼らは健康なのである。ゆえに健康というものはいやなものなのである。元気すぎる人には閉口するがごとしである。けれどもやはり国は先づは健康でなければならないのである。自らを侮るものは他の侮りを受けるという。私たちはその侮りに長く耐えられるか。いや私たちは軽侮されている認識さえ持っていないように思われる。他人だからである。

 急転回をご寛恕いただくとして、ここからは芸術の人が日頃養っておくべき他人のことである。今展の森野彰人は当人あるいは他人、どちらの支配を受ける人であろうか。私たちは個人とか法人でいるときは当人のかたまりである。わが家わが社の利益と繁栄をまあ願わぬものはいない。森野の家は彼を入れて四代続く陶家である。だから彼は家業のやきもの屋としては当人たらざるを得ないだろう。守るべきものがある。四代も続けば業界という仕組の中での立居振舞というものもあろう。加えて彼は大学という学校法人の一員でもある。いわゆる宮仕えである。これでは当人だらけである。べつに筆者の案ずることでもないのだが、ついには彼の日常での当人部分が、彼の内なる他人を圧して追い出してしまうのではないかと思われる。芸術の人が昵懇であるべき他人とは理性を帯びた、あるいは狂気を帯びた、ときには毒々しい、ときには神にも近い他人というものではないか。そのような他人を内心に住まわせておかねばならない。その意味で不健康に耐えねばならないのである。森野の内心のことはわからない。おそらく当人と他人がせめぎ合っているのだろうと思う。それには切実なものがあるのではないか。

 森野を見ると健康であらねばならないことにどこか倦んでいるような気配が感じられる。そこに期待するに足るものを感じる。なにも不健康一途であれなどと言っているのではない。曰く言いがたいがそういう意味ではない…。彼には世代的にもこの京都に拠って、これから矢面にも立っていただきたい。当人部分と喧嘩しつつやって行ってほしい。狎れてしまってはダメだろう。彼の創作のリビドーを勃然たらしめ、また彼の非常に洗練された感覚をさらに飛翔せしめるものは、彼の内なる他人なのではないかと思って云爾(しかいう)。

葎

AKITO MORINO
略歴
1969 京都府に生まれる
1993 大阪芸術大学芸術学部陶芸コース卒業
1995 京都市立芸術大学大学院美術研究科修了
     滋賀県立陶芸の森創作研修館にて研修
1998 第5回国際陶磁器展美濃’98 銅賞
2007 京都市芸術新人賞
  現在 無所属、京都市立芸術大学専任講師

主な個展
1993 ギャラリー白/大阪(’94、’95、’96、’97、’98)
1998 マスダスタジオ/東京
2003 和光アートサロン/東京(’06)
2005 SILVER SHELL 京橋/東京(’08)
2006 ギャラリー器館/京都
2007 京都高島屋/京都

主なグループ展
1994 近作展17 クレイワークの4人展
     国立国際美術館/大阪
1996 現代陶芸の若き旗手たち
     愛知県陶磁資料館/愛知
     ’96新鋭美術選抜展 
     京都市美術館/京都(’98、’00、’02、’05)
1998 美の予感―工芸― 高島屋/東京・大阪・京都・横浜
     陶芸の現在的造形 リアス・アーク美術館/宮城
2002 開館記念現代陶芸100年展「日本陶芸の展開」
     岐阜県現代陶芸美術館/岐阜
2003 柳原睦夫と現代陶芸
     14人の尖鋭たち―現代陶芸の系譜―高知県立美術館/高知
2006 日本陶芸100年の精華 茨城県陶芸美術館/茨城

主なパブリック・コレクション
滋賀県立陶芸の森、岐阜県現代陶芸美術館、茨城県陶芸美術館、京都文化博物館、京都市、国際交流基金、石川県立九谷焼技術研修所

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