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photo:来田猛

升たか展Taka MASU

The Soul of Minstrel

3/15 Sat. 〜 4/6 Sun. 2014

 筆者はどうしても作品よりもその人のほうに興味とか意識が行ってしまうタチで、それでなにかとシンドイことなってしまうことがある。もちろん入口は作品からでそれは前提である。そこから興味がどうしても人のほうへ走ってしまうのである。そしてその人の人間としての陰翳の部分まで遠望しようとするので(もちろん取材のようなことをした上でだが)、またそれが多分におのれの想像力を勝手に働かせてのことなので、ある種の畏れみたいなものをいつも感じている。
 升たかは、五十を越えてからやきものを始めている。ほぼ独学だったらしい。遅いといえば遅い。それまでも遠目に興味と予感のようなものは感じていたらしいが、機と縁が熟すまでと待っていたのだろうか。1946年長崎生まれ。十九のときに、あの寺山修司の劇団、天井桟敷に入っている。ボヘミアンだった自分を、ひょんなことから寺山が拾い上げてくれたという。寺山のことを全然知らず、本も読んだことがなかった。人生の風の吹きまわしというのか、まさに縁とは異なもの不思議なものである。劇団で役者として舞台にも上がり、制作、裏方の仕事もある程度まかされるようになったが、二年ほどで寺山のもとを去る。寺山という巨大で異形な個性の間近にいることに、ある種のやばさを感じたという。なんとなくその気持ちわかるような気がする。覆いかぶさるような影響があったのだろう。
 その後70年代に、アメリカのサンフランシスコ・アカデミーアートというところへ留学。もともと絵心のうずく人だったのだろう。帰国後はイラストレーターとして活躍する。日本グラフィック展などで受賞をかさねている。けっこう有名だったらしい。他方で、日本染色新人賞とか、青木繁記念大賞といった別種のジャンルでの受賞がある。青木繁は夭折の天才洋画家として美術史に刻まれている。たしか教科書にも出ていた人である。その公募展で大賞を取っている。グラフィックデザインという、注文主がいてコマーシャル色の濃い仕事に倦む気持ちがあったのかもしれない。勃然たる思いで一気に百点ほどの油絵を描いたという。そのうちの一点が大賞を受賞することになる。やきものを始める四年前のことである。なにやら一所に落ち着かない半生のようにも思われる。転がる石は苔をむさないというが、どうもそのような人のようである。しかし決して浮薄な人という意味ではない。
 升たかの絵付はカラフルである。細密な絵付である。中国の万暦赤絵とか豆彩、粉彩といった色絵手を彷彿とさせる。モチーフは、いわゆるシルクロード、セラミックロードといわれる古の歴史的文化的流れのなかから多く採用しているようだ。ペルシャ、シナ、ジャワあたりのエキゾチシズムが横溢している。器物の形はいたってシンプルで凝ったものはない。絵を描くために、絵のほうに重点を置いているのだろう。筆者は彼の筆致が好もしい。職人のそれとはあきらかにちがって、彼の内奥からのナチュラルな部分が滲み出ている。この人は、その人生の遍歴はさておき、本来は絵描きであろうと思う。一筆一筆じくっと乗せていくような、かなり遅めと思われる筆の運びに、一人の絵描きとしての息づかいを感じさせる。ちょっとちがうかもしれないが、その高風匂い立つようなアマチュアリズム、鷹揚さ、独特な筆致とスピード感といったものは、かの富本憲吉に通底するものを思わせる。要するにいわばやきもの屋臭さが皆無なのである。やきものの世界へ、まったくの別方角から、いろいろな迂回を経てやってきた人にみられる共通項なのかも知れない。
 作品ハ人ナリというが、さもありなん。芸術の作品ほどその人の来し方と現在を、虚実こきまぜてあらわに示すものはないかもしれない。筆者は、せっかく生きている者同士である、人を見て人を知りたく思う。作品と合わせ鏡のようにして。升たかという人は、自分が何者かという問いを発し続けてきたのではないか。そして旅をし続けてきた人のように思う。片腹痛い自分探しの旅などではなく、それは、場面場面で精魂を費やすようなものだったように思う。ある意味しんどい生き方なのかもしれない。しかしその代わりに、自由という空気を、人より各段に多く呼吸してきたようにも思われる。さっき言った遍歴のローリングストーンである。だからいつかヤキモノにもサヨナラしそうな様子である。やきもの贔屓としては、多少の苔のむすまで居つづけていてほしいが。そのような印象の人なのである。-葎-

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