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photo:Takeru KORODA

平松龍馬展Ryoma HIRAMATSU

Suggestion From A Kind Demon

9/20 Sat. 〜 10/5 Sun. 2025

 西行の「受けがたき人の姿に浮かび出でて懲りずやたれもまた沈むべき」という歌はそらんじている。第三句がなぜか六文字になっているが…。西行法師の歌は新古今のなかでも異彩を放っている。入っている歌の数も一番多い。西行は出家しても風狂の人だったと思う。筆者はそのすべての掲載頁に付箋代わりの折り目を付けた覚えがある。
 私たちは昔から「もののあはれ」という。自然や人生、芸術とかに触発されて生ずるしみじみとした感応とか哀情に敏感な血脈があるようだ。その背後には無常の思想がある。この世は無常であることの避けがたい現実は、善人であれ悪人であれ、生きていれば必ず一度は思い知る真実であろう。もっとも無常のさまを目のあたりにして、その実相に心を動かされたり絶望したりしても、その経験が経験となって本当に思い知るかどうか…。人はみな元の木阿弥に戻りたがるきらいがある。お釈迦様の説法も形なしということか。
 しかしとまれ、私たち日本人ほど無常観というか、もののあはれを思想とし深めてきた民族は少ないのではないか。あらゆるほとんどの古典文学の根底にそれはあるし、古人の生き方や振る舞い万般にも、方位磁石のようにのっぴきならぬ影響をあたえてきたように思う。西行の文学的テーマも、つづめればこれに尽きるのではないか。もののあはれのなかに私たちはかえって永遠の相を垣間見たりするのである。
 自然であれ、ものごとであれ、ものを見るということは、そこになにかを、たとえば美でもいい、なにかを観じようとする行為でもある。しかし私たちは見れども見えずのまま素通りしている。なんというか生身としてのセンサーの感度が鈍磨してしまっているのである。あはれという言葉は間投詞でもあり、ああ、はれと我知らず感動につき動かされることである。ものに対し全身で同情し、ものとおのれを重ねあわせることである。そしてものもおのれ自身も共に常ならぬ存在であることを、腹の底に呑み込んでいればこそあはれと思われるのである。思えばそこに立ち止まり沈黙するのである。そこには凝視と驚きと自省があり、同時にたとえば美の感得発見が行われるのである。かの侘び茶の世界などは、かくのごとき美の発見が積み重なって成ったものと思われるのである。
 もののあはれを思う心は、我も含め私たちが失ったもっとも大切なものかも知れない。そういえば思い当たる。私たちはこれまでいろいろなものを成敗しようとしてきた。時間がそうであるし、空間がそうである。言葉が、文化がそうであろう。時間と空間を縮めてどうなったか。ゼロになっただろうか。めまぐるしくなっただけである。過去を、弊履を棄つるがごとく扱ってどうなったか。喪失の寂寥とともに私たちの正体が怪しくなっただけである。あはれにはミゼラブルという謂いもある。これでは我も人もミゼラブルではないかと思ってしまうのである。
 一昨年来、二度目の平松龍馬展である。写真の鬼か般若を思わせる作品は、以前から彼のモチーフとするところのものだが、悪ノリして小鬼(ぐい吞)を頭に乗せてみた。人外のダイモーンの風情に満ち満ちてインパクトある図になっていると思う。般若は能の女面だから鬼と取るべきか。しかしダイモーンに雌雄の別はないだろう。仏説にいう、人間の根本的な煩悩には三毒あり、それは貪欲、憎しみ、無知だという。ギリシャの古人はいう、戦争は人間の欲望、恐怖、面子(めんつ)が根本のベクトルとして働くと…。
 平松のダイモーンは、そんな私たち人間を、ああ、はれと見て、西行の歌ではないがどこまでも懲りないどうしようもない奴ばらと見て、小鬼を従え忿怒の形相で見栄を切っているようだ。牽強付会気味だったが、じっと眺めていると、この時世時節、よしなしごとがとりとめもなく浮かんでくるのである。この度も何卒のご清賞を伏してお願い申上げます。-葎-

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本展の出品作品は、Shopページでご覧いただけます。
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加藤委展
前の投稿2025年8月23日

加藤委展

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